四方八方からやり玉に:どうなる「英国デジタル経済法案」 | MediaSabor メディアサボール
英国政府が、デジタル時代のアクション・プランとも言うべき「デジタル・ブリテン白書」< を発表したのは昨年6月。そして、そのプランの一端として昨年11月、エリザベス女王による議会開会演説の中で「英国デジタル経済法案 (Digital Economy Bill = 略称DEB」< が提出された。
違法ダウンロード対策、ゲームの適齢表記義務、ブロードバンド普及促進など、途方もなく広いエリアをカバーするこの法案は、英国首席大臣、ビジネス・イノベーション・技能大臣であるマンデルソン卿がリードする形で、現在審議にかけられている。まばたきをするよりも早く変化しているデジタル経済という激流の中に、法的な枠組みを建てようという野心的なこの法案は、発表と同時にありとあらゆる方面からの反発を巻き起こした。
■違法ダウンロードの取り締まり━━推定無罪を認めるのか
たとえば、音楽や動画などの違法ダウンロードの取り締まり。この法案は3ストライク法とも呼ばれ、フランス版が議会を通過したこともあり関心を呼んでいる。警告を2回無視したユーザーの接続は、3回目に遮断(ストライク)されるのだが、ユーザー=つまり犯人の特定方法は、単純に接続元IPアドレスから割り出すだけ。では例えば、自分のWi-Fi コネクションに侵入した赤の他人が、違法ダウンロードをしたらどうなるのか? 現在、誰にでも無料無線LAN接続を提供している公立図書館やカフェ、パブなどの場合は? などのシナリオを考えて行くと、門外漢すら疑問が湧く。
市民の障害に関する国家諮問委員会の報告書
「各自が接続セキュリティーをアップすればよい」と言っても無理がある。テクノロジーに疎いブロードバンドユーザーにも最適と売り出した無線LANのWEPシステム(Wireless Equivalent Privacy) などは、「絶対安心」と謳われていたが、サービス開始後すぐにハッキングされてしまった。また、ISPはユーザーの一挙一動をモニターし、違法あるいは不審な使用を当局に報告する義務を負わされそうだ。そしてホテルなどはISPに報告する義務が。そこにかかる経費負担に加え、ホテルやISPが秘密警察さながらになってしまうことに、これまた大きな反対の声が上がっている。< 野党各党も人権擁護団体も反意を表明している。
■ヤフーやGoogleも大反対、政府の権力強化:孤児作品規定はパンドラの箱
法案が実効になってから、その内容を自在に変える事のできる権限を大臣に与える第17条の反対運動を率いているのは、ヤフー、Google、日本のMixiのようなソーシャル・ネットワーキングサイトであるフェースブック、オンラインオークション最大手のeBayなどネットの巨人達だ。150年ぶりの著作権法改正まで入っているのに、「新法律」とだけ表題をつけて中は白紙のまま。内容はあとで勝手に決めるから、という法案など到底受け入れられないと言う。
そして、著作権保有者を見つけることのできなかった作品は「孤児」と見なし商用に使って良い、という第42条についても喧々囂々だ。これに関しては、電子書籍に関する話題だけが一人歩きをしているが、画像だって動画だって、デジタル化された作品の著作権を示す情報が、はぎ取られてしまえばもう立派な「孤児」だ。誰が自分の作品を無断で使っているかさえわからなくなる。アメリカでも提案されたが実現しなかったこの条項には、CG作家やプロカメラマンなどクリエーター団体、美術関係者が猛烈に抗議している。<
どの程度の努力を持って「探しましたが著作者は見つかりませんでした」と宣言できるのかなども不透明なら、他国の著作権法やベルヌ条約などとも相反しそうなので、広告代理店や弁護士らは国際訴訟の標的になることを懸念している。
海兵隊は、これまで社長を守るのですか?
■旧人類と新世界
これだけの反対にあって、英国政府はどうするのかが世界中から注目されている。推進派には大手レコード会社、出版社、大量のフィルムやスクリプトを抱える放送局などが並ぶ。メディア王マードックも、表明こそしていないが、懸案のネットニュース有料化に追い風となる規制は歓迎と見られている。彼らは世界がアナログだった頃に発展したメディア産業人、つまり旧人類である。政府も含め、旧世界のやり方でデジタル新世界を何とか制しようとしているところに、この法案の問題がありそうだ。
ただ、これからのデジタル社会のありかたを改めて考える「たたき台」にはなっている。前述の第42条への反対派とて、英国図書館や大学など非営利団体による孤児作品のデジタル化には、恩恵があると認めているように。あとひと月程度で審判が下るが、修正可決されるのか、それとも総選挙に不利とポイ捨てされるのか、目が離せない。
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▼ゲスト:神保哲生(ニュース専門インターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム」代表)
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