著作権法ガイド(無料引用のルール)
文章を無料で引用できる基準を説明。著作権法は、ルールを守れば著作物を許諾なしに(無料・無許可で)部分引用できることを定めています。さらに報道などであれば、もっと広く引用できる例外も定めています。新聞記者などジャーナリストや、ホームページ・ブログに記事を書かれる方は、こういった引用基準を知ることで適法に書くことができます。無料素材サイト集もあり
■ポイント1:許諾なくても引用はできる
著作権法は、
(1)著作権者の権利を守る(= フルに引用するときは有料) だけでなく、
(2)公共の福祉のため、著作を無料・無許可で誰でも部分引用できるルールも定めています。
(3)さらに報道(ニュース記事)などは著作権法の例外になっていて、必要な範囲内で広く引用することができます。
無料引用(=「公正な引用」)の5要件:
必然・主従・「 」・出所明示・引用しすぎない (のちに説明します)
無料引用できるのは必要最小限、短い一部分のみ。引用しすぎると「盗用」です。
日本は「無方式主義」のため、著作権は届けなくても誰にでも自動的に発生します。申請も登録も不要です。
(なお、方式主義だったアメリカではⒸ表示が保護の要件だったが、1989年ベルヌ条約加入後の法改正で、Ⓒ表示がなくても保護されることになった。アメリカ企業がⒸ表示をしつこく求めるのは、そうしないと権利を失った時代のなごり)
■ポイント2: 無料で使用できるもの全リスト
以下は相手の許可なしに、無料・無断で使えます。しかし厳密な条件があります。
「私的使用のための複製」(家庭内・友人間での使用)
部分「引用」 (ルールがあります)
「学校における複製」(教室を一歩出れば有料)
「試験問題としての複製」 (→入試と著作権ページ)
完全非営利の上演・演奏・上映・口述など(条件あり)
保護期間の切れた著作物(死後50年など)
著作権者が「勝手に使っていいです」としているもの(文化庁の自由利用マークが付いているものを含む)
法律・条例・判決 (は著作権法の対象外)
著作権の条約未加入の国の著作物
「点字による複製」
*著作物を全文引用をしたい(正式に許諾を取りたい)方・学校教育での使用は、入試と著作権ページをご覧ください。
ここ以下は、ルールのくわしい説明などです。
■正式用語 の説明
「複製」(copying) = 丸写し使用。無許可なら「盗用」
「引用」 = 部分使用
著作権 = copyright = 「copyできる権利」。知的財産権の一種
「許諾」 = 許可 = 「使用料金を支払う」ことと、ほぼ同義。もちろん「無料で使っていいよ」もありえます
■無料・無許可でできる部分引用のルール
以下のルールの範囲内であれば、誰でも(新聞記者でも一般の方でも)、著作権者の許諾(許可・使用料の支払い)なく、勝手に引用して構いません。著作権法上、合法です。
■(1)部分的引用は無料 (必然・主従・「 」・出所 なら無料。 丸写しは有料)
部分的引用は著作権法で堂々と認められています。
報道、批評、研究などの正当な目的のために、その目的上正当な範囲内で引用できます。
1.そこを引用する「必然性」がある(どうしても必要だ・引用しないと自分の文章が成り立たない = 単に「面白い記事なので紹介したい」では必然性がない)、
2.質的にも量的にも、自分の文章が「主」、引用部分が「従」という関係にある(最高裁判例)
3.引用部分を「カギカッコ」などでくくり、どこからどこまでが引用か明らかにする
4. 出所の明示が必要。(出典。誰の何という文章か)
5.「正当な範囲内で」 = 引用しすぎてはいけない = 1〜4を守っても、大規模に使うと違法。著作権者の不利益になるため
同様の目的であれば,翻訳して引用しても構いません。
以上の引用原則は文章に限らず、写真・絵・音楽でも同様です。
本人は引用のつもりで、著作権を侵害していることが多いようです。上の引用ルールをマスターしましょう。
(引用)著作権法第三十二条
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
引用における注意事項
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
1)他人の著作物を引用する「必然性」があること。
2)かぎ括弧をつけるなど,「自分の著作物」と「引用部分」とが区別されていること。
3)自分の著作物と引用する著作物との「主従関係」が明確であること(自分の著作物が主体)。
4)「出所の明示」がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)
くわしくは文化庁、著作権情報センター、Asahi.com著作権
・参考:米国の著作権法
「..., the fair use of a copyrighted work, including such use by reproduction in copies or phonorecords or by any other means specified by that section, for purposes such as criticism, comment, news reporting, teaching (including multiple copies for classroom use), scholarship, or research, is not an infringement of copyright. In determining whether the use made of a work in any particular case is a fair use the factors to be considered shall include ...」 U.S. Code: Title 17 107
ではfair use(公正利用、米国著作権法107条)と呼ばれ、包括的で一般的で、公正利用となるケースを細かく限定していない。くわしくは米著作権局
これに対して日本の著作権法は、著作権侵害にならないケースを一つひとつ列挙して限定 = web上など新しいことがらは、いちいち法改正しないと違法に 文化審議会の小委員会が審議 朝日09/9/28p3
■(2)著作権が切れたら無料 (すべての人が自由に使える文化遺産に)
有効;日本では生存中と死後50年間(翌年から数える)
法人など団体名義は公表後50年(翌年から数える)
映画は70年に伸びた。ただし、延長をした2003年法改正が適用されるのは1954年以降の法人が著作者である作品(08/12/18最高裁判決)。1953までの『シェーン』は延長対象にならず、著作権は切れた→格安DVD可能に。主な1953作品:『ローマの休日』『君の名は』 。また、監督など個人に著作権がある古い映画は、別途裁判係争(旧著作権法に「著作権の保護期間は著作者の死後38年間」と規定されているため) 朝日06/5/26p1, 07/4/28p2,08/12/19p1,p30に1953作品リスト
欧米は死後70年+α(第二次大戦特例などあり数年伸びる)
米国では1920年代のミッキーマウスの著作権が切れそうになるたびに保護期間が延びる法が成立し(56年間 → 75年間 →95年間)、「ミッキーマウス法」と呼ばれています。
具体的には、1998年著作権延長法 (Copyright Term Extension Act)によって、1977年以前の著作権は発行後95年に延長。1978年以降に発表されたものについては死後70年間で、法人著作は発行後95年間か著作後120年のうち早い方。
PublicDomainMovies=著作権フリー映画 延長の歴史:朝日06/10/11p33表, 日経06/11/5表 朝日07/6/2b3、07/12/28p3各国の保護期間図解))
著作権が切れるとパブリック・ドメイン(共有財産)
著作権が切れた本を集めた電子図書館 著作権が切れた文学作品などは「難しくたくさん」内にリンク。青空文庫など。
○著作権が切れる作家・画家(死後50年の場合)
2007 高村光太郎 2009 横山大観 2010 高浜虚子、永井荷風 2013 室生犀星、柳田国男
日本の創作者団体協議会も70年への延長を求めている。ただし延長が実現しても、いったん切れた著作権は復活することはない。
○著作権のベルヌ条約は相互主義で、日本の保護期間が死後50年だと、外国でも日本の著作物は死後50年しか保護されない
戦時加算
第2次大戦中・直前の戦争時代に、外国の著作権が日本で保護されなかった期間を除外して計算することになっている国もあり、実際は複雑です。日本での没後50年の保護期間に10-12年間が加算された18国:米、英、仏;オーストラリア、ブラジル、カナダ、ギリシャ、オランダ、パキスタン、南アフリカ、スリランカなど。これらの国の人の著作物は、日本では没後最高62年間、保護されます。
中、ソはサンフランシスコ平和条約に署名しなかったため除外され、延長はない。JT07/10/10p3